関東〈南〉ブロック代表:千葉県立松戸馬橋高等学校
『神隠し「八十八ものがたり」』(岡安伸治・作 土田峰人・構成)





天明の大噴火から始まった大飢饉。奥羽地方だけでも百万人もの死者。
岩木郡米里村の百姓達は名主の家を襲ってお屋敷を空にした。
役人達がやってきて取り調べとなった。
広場に集められた百姓達は、必死に嘘を考えた。
「馬喰の八十八が名主様やその下男や名主の持ち馬全てを葬りました。」
「どういうことだ。」
「八十八の話をここでやってみますべ。」
村人達の即興劇が始まる。
荒唐無稽・抱腹絶倒。さて村人達の運命は?

【客席からのメッセージ・感想・劇評】

○岡田(広島県・40代後半・男)
 この人数でテンポよい展開は、かなり訓練されていることがうかがえました。全員が普段から他の部員のことを把握しながらの劇造りを実践しているのでしょうか。2日前のトラブルを感じさせないお芝居に仕上がっていたと思います。怪我をされた方、回復をお祈りしております。
 次から次へと繰り出される村人のつくり話は、生きていくために様々なことに協力したり工夫した昔の村の生活を思わせるようでした。このお芝居のメインがここに集中していたため、その前後の物語が少し薄くなってしまった感じがありました。
 とくに、最後あたりで村人たちが殺される場面。意図的な演出だったのかもしれませんが、ちょっと「あれれっ」ていう感じで幕を迎えてしまいました。弱いものたちが必死に生き抜こうとして、一つのピンチを乗り切ってホッとした雰囲気をバッサリ切られる部分が、もう少し観たかったなと思いました。その分、このお芝居は90分〜120分で観たいお芝居だと思いました。それが出来る皆さんだと思いました。
 でも、あっという間の70分、楽しませていただきました。ありがとうございました。

○おかべあつし(岩手県・40代中盤・男)
 稽古を積んだ舞台に感動してしまいます。あれだけのキャストとスタッフ、一人一人の台詞と動きが明瞭に私に届いていました。劇作りにかけるエネルギーに感動しました。
「高校演劇レベル」なんて言葉を使う人がいますが、そんな人たちにこの芝居を見せたら、どんな言葉を返してくれるのだろうかと思います。「高校生なのにすごい」とか「高校生でもこれだけできる」とかでしょうか。
 とはいえ、この言葉に満足はできませんよね。私としては、今回の芝居からは、芝居作りのエネルギーは感じましたが、芝居そのもののエネルギーが喰い足りない感じがしました。八十八人の村人のエネルギーとでも言えば良いかもしれません。テキストレジの問題かもしれません。物語を追うだけで、村人たちの猥雑さや、悲しみの重さが感じられなかったのです。私は雪国(岩手)に住んでいるので、今回の芝居では「雪の重さ」が感じられたら私は満足したのかもしれません。軽やかな八十八の神隠しから重厚な「何か」がズシンとくる。そんなことを期待してしまうのは、私が欲張りな観客だからかもしれません。
 私にとってズシンとくる芝居は、高校生だとか大人だとかプロだとかアマだとか関係なく、突然出現します。そんな瞬間を作り出す可能性を感じた舞台でした。
 ……なんか偉そうに書いていますが、とにかく舞台作りに向かうエネルギーが凄い! 色々な方々に紹介して回りたいくらいの良い舞台を見させてもらいました。ありがとうございました。 

○天文部部長(岡山県・10代後半・女)
 最初から度胆を抜かれました。一瞬で舞台に引き込まれました。あのような装置を初めて見ました。大道具屋として非常に勉強になりました。不思議な雰囲気を醸しだしていて素晴らしかったです。
 役者は、表情・動き・声、全てにおいて素晴らしかったです。日頃の練習風景を見てみたいです。皆さん、全力で、本気で演劇をしていることがよくわかりました。身体の芯まで伝わりました。客席を使う演出も臨場感に溢れていました。照明の工夫も、細やかな音響も、舞台により引き込む役割をしていてすごかったと思います。絶妙でした。個人的には、鵺の皮が天狗の皮になっていたのがツボでした。
 劇を通して、松戸馬橋演劇部のレベルの高さ、団結力、演劇に取り組む姿勢を見ることができたと思います。感動を有難うございました。これからも頑張って下さい。



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